« チャンピオンをサポートするショーン・ビーンの動画 | トップページ | ヴィゴの ”The Two Faces of January” にキルスティン・ダンストも参加 »

ウィーン旅行記:第2日目(2) Don Carlo 鑑賞1回目

Don_carlo_0さて、いよいよウィーン国立歌劇場で「ドン・カルロ」の鑑賞の1回目です。

Don Carlo (イタリア語 4幕版)

2012年6月22日(金) 18:30開演

指揮: フランツ・ウェルザー=メスト
演出: ダニエル・アッバード

フィリッポ2世: ルネ・パーペ
ドン・カルロ: ラモン・ヴァルガス
ロドリーゴ: サイモン・キーンリーサイド
大審問官: エリック・ハーフヴァーソン
エリザベッタ: クラッシミラ・ストヤノヴァ
エボリ公女: ルチアーナ・ディンティーノ

今回の旅行を計画するにあたって、まず真っ先にこの「ドン・カルロ」のチケットの手配から始めたわけですが、ウィーン国立歌劇場の公式のチケット販売サイト Culturall(日本語ページもあります)のスタンバイに「ドン・カルロ」2回分と「ランメルモールのルチア」を登録したのが1月14日。そして早々と26日にはチケットがご用意できましたとのメールが。
しかもその取れた場所を確認したら、たいへん良い席でした。

本日1回目の席はパルテーレ・ロージェ(1階ボックス席)上手側の11番の1列目。
ほぼ正面を向いた席で、1階といっても見晴らしがよくて見やすい席でした。
私の席からの眺めはこんな感じ。

20120622_12 20120622_13 20120622_14



1枚目の写真で座席の背に青く光って見えているのは字幕表示画面です。
ドイツ語か英語の字幕が選択できます。

今回の演出は、指揮者クラウディオ・アッバードの息子であるダニエル・アッバードで6月16日がプレミエだった新演出です。
本公演は新演出の3回目の公演ということになります。

舞台のセットは非常にシンプル。上下左右奥の黒っぽい壁に囲まれた箱のようなイメージのセットで、それぞれの壁(上下も)が移動して自由に空間の広さを変えるのですが、しばしば壁に囲まれて押しつぶされそうな圧迫感・閉塞感が感じられる舞台。

衣装も地味なので舞台写真でみるとパッとしない感じに見えますが、横から当てることの多い照明が効果的ですし、変にひねった解釈や妙な読み替えもなく、歌に集中できるので、出演者たちも思う存分演じている感じでした。

まず前奏のホルンを聴いた瞬間、そのなんとも柔らかな音色に、おぉ、これがウィンナ・ホルンの音、とちょっと感動。
そして、舞台裏から聞こえてくる修道士たちの合唱が、音の密度が濃いのにすっきりとした響きで大変美しい。

Don_carlo_12 タイトルロールのヴァルガスは、出だしはちょっと声が安定しない感じがありましたが、だんだん喉があたたまってきたようでした。

4幕版なのですぐにロドリーゴが登場するのもちょっと嬉しい。
あちらのレビュー記事で、ロビンフットのようだと言われたロドリーゴ。確かに侯爵などという高位の貴族というよりは、パルチザンの闘士かジェダイの騎士かといった感じですが、キーンリーサイドには似合ってます。

ドレスリハーサルのものと思われる舞台写真では髭を蓄えた姿ですが、私が見た舞台では髭は綺麗に剃っていました。
髭が無い方がちょっと若く見えますから、ロドリーゴはこの方が良いかもしれません。

キーンリーサイドはとても調子が良さそうで、決して大きな声ではありませんが良く伝わってくる声でした。

あの有名なカルロとロドリーゴの二重唱のところでは、最初、カルロは自分の思いにふけってロドリーゴの方をまったく見ないのに対して、ロドリーゴはずっとカルロの顔から目を離さずに歌っていますが、繰り返しになるところでカルロはロドリーゴと目と目を合わせて、思い切り声をひそめたピアニシモで、ぴったりと息を合わせて歌うのが美しいですし、2人の心が寄り添った感じがしてとても良かった。
ここでの拍手はかなり大きく長かったですね。

ヴァルガスのカルロは、無鉄砲な感じよりも育ちの良いおっとりしたお坊ちゃんと言った風情で、あまり突っ走る感じはなかったように思います。

この修道院のシーンの最後で国王一家が紗幕の後ろに姿だけ現しますが、フィリッポ王とエリザベッタの間にはベラスケスの描いたマルガリータ王女のような姿の幼い王女やその他の王族たちも従えていて、ゴヤの「カルロス4世の家族」みたいだったのがちょっと印象的でした。

Don_carlo_7 修道院の中庭のシーン。

ここの女官たちの衣装はちょっと簡素過ぎてあまり宮廷人には見えませんね。

ロドリーゴの計らいでカルロと会ったエリザベッタがカルロを拒絶した後、いよいよパーペのフィリッポ王が本格的に登場。

王様登場シーンは暗いセットの背後が急に明るくなります。ノッシノッシと急傾斜の舞台の坂を下りてくる王様は完全にシルエットに。
王様の衣装は軍服の礼装といった趣きですが、このシルエットが意外に(失礼bleah)ほっそりしていて、足が長く頭が小さいバランスで、ルネさんカッコイイじゃありませんか。

王妃が一人きりでいることを咎める第一声が朗々と響き渡って素晴らしい!
パーペのダイナミックレンジの広さはやはりずば抜けていますね。

対するストヤノヴァのエリザベッタは非常に気丈な女性で、運命に翻弄されるがままのか弱い女性ではありませんでした。

フィリッポに追放を言い渡された自分の側近の女官を慰めながら、フィリッポへは非難するようなまなざしをきっぱりと向けていました。王様がちょっと居心地悪そうな表情になるぐらいにずっと。

なるほど、これはフィリッポが後で嘆くわけですね、優しいところを見せずに冷酷な態度を取るフィリッポの自業自得でもあるのですが。

Don_carlo_6 王に言われて残ったロドリーゴとフィリッポの対決シーンは非常に聞きごたえがありました。

ちょうど良いバランスで拮抗している感じで、とても緊迫感のある舞台。

パーペのフィリッポは見た目は髪を白っぽくしていますが声は若々しく、ロドリーゴを自分の息子の代わりとして見ているというより、やはり信頼できる友、真実を直言してくれる友人を求めているという感じですね。

2幕、エボリをエリザベッタと勘違いしたことを気づかれてしまったカルロ。
そのカルロの秘密を守るためにエボリを亡き者にしようと剣を抜いたロドリーゴを、カルロが押しとどめますが、カルロが全身で押しとどめなくちゃならないぐらい、ロドリーゴは力が入ってました。

Don_carlo_1 宗教裁判のシーンでは、フィリッポが登場するところで舞台奥の背景が金色になり、この全般的に暗い舞台セットではもっとも華やかなシーンとなります。

ロドリーゴの剣も、カルロが国王に対してついに抜いてしまう剣も、このオペラの小道具の剣はなぜかみな短剣ぐらいのものでした。
動くのに邪魔にならないのは良さそうなんですが...

20120622_16 2幕が終わったところで休憩。
ゴージャスな休憩室の雰囲気をしばし楽しみました。

3幕はいよいよフィリッポ王の長大なアリア「彼女は私を愛したことがない」。

幕が開くと、がらんとした暗い部屋の床にはたくさんのろうそく、大きな椅子が一脚あるだけで、後はベッドも机もありません。

椅子の上で一人悶々とするフィリッポの写真はプログラムの中にもあるのですが、プログラムでは白いシャツに黒いズボンという姿だったのが、実際の舞台ではずっと長いガウンを羽織ったままでした。

パーペのフィリッポの声はここでも姿より若々しく、エリザベッタに愛されていないと悶々とするのもまだ壮年だからという感じ。非常に声と歌がハンサムです。フィリッポ王としてはカッコ良すぎるかも。wink
このアリアの後の拍手・歓声も非常に盛大でした。

フィリッポと大審問官、フィリッポとエリザベッタ(ここにロドリーゴとエボリが加わった4重唱がとても良かったです)、エリザベッタとエボリと次々見せ場が続きますがそこはちょっとはしょって...

Don_carlo_4 ロドリーゴの死のシーンとなる、カルロのいる地下牢のシーン。
ここでは、セットが威力を発揮します。

傾斜舞台面をぱっかりと蓋のように開けて、その下が地下牢に見立てられています。
蓋になっている部分が、舞台の高さの半分ぐらいまで上からのしかかっているので、開いている空間は下半分だけ。
とても圧迫感があって、地下牢らしい雰囲気です。

ロドリーゴの死のシーンは拍手をする隙間がないので、「カルロの身代わりで自分は死ぬからお別れにきた。」と歌うロドリーゴの歌の前半が終わったところで観客のみなさんは盛大に拍手でしばし演奏はストップ。

Don_carlo_5 大詰めの死のシーン。背後から刺客に銃で撃たれたロドリーゴはゆっくりと倒れて横倒しの状態に。
キーンリーサイドはこの体勢のまま最期まで歌っていました。

何度見ても、やはりこのロドリーゴの死のシーンは見せ場ですよね。
特にキーンリーサイドだと、これといった芝居をしていなくても、カルロのために自分を犠牲にするんだということに少し酔ったような若者らしさが出ていてとても良かったです。

Don_carlo_3 ロドリーゴの死を嘆く間もなくフィリッポ王が登場するのですが、その登場は左の写真のように、傾斜舞台の蓋の部分に乗ってそれがゆっくりと降りてくるのです。

Don_carlo_9 最終幕、エリザベッタの「世の空しさを知る神よ」。ストヤノヴァさんの声は真っ直ぐでエリザベッタの決意と気高さが出ていて、難しい高音部分もスマートにクリア。
大変良かったと思います。
やはりこのエリザベッタは非常に芯の強い女性として描かれています。

大好きな「ドン・カルロ」ですが、唐突な幕切れについては、もうちょっと台本がなんとかならなかったのかい、とつい突っ込みたくなります。
それでも今回は、修道僧/カルロ5世の霊(ダン・パウル・ドゥミトレスク)がとてもしっかりした声で良かったです。
この最後のカルロ5世が力不足でずっこけることがあるのですが、第1幕とこの最後をしっかりと締めてくれたと思います。 

20120622_15カーテンコールはブラボー、ブラバー、ブラビーと大変な盛り上がり。
歌手たちは何度も何度も舞台に呼び戻されていました。
最後にはスタンディングオベーションでなかなか客席の興奮が収まらず、客席の照明がついた後もまだ舞台に何度も出てきていました。

解像度は大変悪いですが、カーテンコールの写真も1枚。
カーテンコールの途中で隣同士になったキーンリーサイドとパーペが、何やら仲よさげにお互いに話していたのもちょっと嬉しいような。

オペラに満足した後は楽屋口で出待ちをすることに。
ウィーンの楽屋口は大変に解りやすいところにあるので、かなり大勢の人が集まっていました。

しばらく待っていると、さっそく誰か出てきたのか、楽屋口の入り口からちょっと中に入ったところの人たちに動きが見えます。
あ、あの茶色の頭は ... 主要キャストでは真っ先にキーンリーサイドが出てきました。

やはりキーンリーサイドは人気者らしく、あっという間に楽屋口の外に人垣が。
キーンリーサイドは気さくに写真にも一緒に収まっているし、とてもフレンドリーな感じ。

私もプログラムの舞台写真のところにサインしてもらいましたが、その時にこちらの目を見てニッコリしてくれたので、魂が半分ぐらい飛びかけました lovely

本当に一瞬、わずか3秒ですがサインしているサイモンの動画も撮れたのでちょっと貼っておきます。

次に出てきたのはカルロを歌ったヴァルガス。
彼はさっさと楽屋口入り口横のソファとテーブルのある小部屋へ入って、万全の態勢でサイン会です。横には彼の息子さんも一緒に。

ヴァルガスにもプログラムの写真にサインしてもらって ”Thank you very much.” と言ったら、「アリガトウ」と日本語で返ってきました。happy01

ハーフヴァーソン、ストヤノヴァ、ディンティーノと続々出てくるのですが、肝心のパーペが出てきません。
どうしたのかなぁ、様子もわからないし、ともどかしく思っていたところで「あら、あなた、たしかMETでお会いしたわよねぇ?」 という声が。

振り返ってみると、なんと昨年12月にニューヨークで「ファウスト」の出待ちでたまたま一緒になって、カウフマンとのツーショットのシャッターを押してくださった方ではないですか!

この方、NYでお話した時もカウフマンのファンとはお聞きしてましたが、パーペのファンというわけではなかったので、もうびっくりです。

今回はお友達の方と一緒で、その方がキーンリーサイドの大ファンとのことでしたが、ご本人は別にキーンリーサイドは特に何とも思っていないらしく、私がキーンリーサイドも大ファンで、パーペとキーンリーサイドが一緒に出るから来たんだと話すと、「で、キーンリーサイドってどこが良いの?」なんて聞かれるしまつ。coldsweats01

でもとっても楽しい方なので、そのお友達と3人でお話をしていたら待っている時間が過ぎるのはあっという間。
楽しくおしゃべりしていたので良かったのですが、パーペはこの日はほかに予定でもあったのか、反対側の楽屋口から出てしまったらしく、結局、守衛さんがもう楽屋口を閉めるからという時まで会うことはできませんでした。残念!

最後に本日の収穫です。

20120622_20 20120622_21


twitter/punkt_ochibo

|

« チャンピオンをサポートするショーン・ビーンの動画 | トップページ | ヴィゴの ”The Two Faces of January” にキルスティン・ダンストも参加 »

Rene Pape」カテゴリの記事

Simon Keenlyside」カテゴリの記事

ウィーン旅行」カテゴリの記事

オペラ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« チャンピオンをサポートするショーン・ビーンの動画 | トップページ | ヴィゴの ”The Two Faces of January” にキルスティン・ダンストも参加 »