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METライブビューイング「神々の黄昏」

Gotterdammerung_2METライブビューイング ニーベルングの指環 第三夜「神々の黄昏」を観ました。

「ジークフリート」を観てから続きを楽しみにしていた指環の最終章。

休憩を含めて5時間半という、演じる方も聴く方も体力がいる大作ですが、大叙事詩の最後を飾るのに相応しい壮大な音楽に酔いしれてたっぷりと楽しむことができました。

今回も、ジェイ・ハンター・モリスのジークフリートは若々しさにあふれていてチャーミング。

急な代役だった「ジークフリート」よりもしっかり稽古ができたぶん、歌そのものにも細かな演技にもずっと余裕があるように感じられました。
1幕のブリュンヒルデとの愛の二重唱も良かったですが、やはり本人も一番好きなシーンというだけあって、3幕のジークフリートの死のシーンには心を動かされましたね。

「ジークフリート」では小鳥が歌っていたあの歌を、こんどはジークフリートがそのままなぞって歌いながら、忘れ薬で忘れさせられていた過去を思い出していくのですね。

ライブビューイングの収録があった日、Twitter でジークフリートの葬送シーンについて触れたモリスに対して、この時のプロンプターを務めたらしい Carrie-Ann Mathesonさんも

嘘じゃないです、私はステージの小さな穴の中で泣いていました。あなたは素晴らしいです。

というメッセージを送っています。(カーテンコールでプロンプターボックスからモリスやヴォイトさんと握手する手が映っていましたが、きっとこの方ですね。)

ハーゲン役のハンス=ペーター・ケーニヒ(今回の指環シリーズでは「ラインの黄金」と「ジークフリート」のファーフナー、「ワルキューレ」のフンディングと大活躍です。)の朗々たる音量に比べるとモリスの声はちょっと小さ目な感じは確かにありますが、あくまでも明るい声質、明るいキャラクターは純真無垢なジークフリートにはとても合っていると思います。

幕間のインタビューでも相変わらず目をキラキラさせていて、ほんとうに舞台で演じるのが楽しくてしょうがないという感じが伝わってくるのがなんとも微笑ましい。

そして「神々の黄昏」の主役はやはりブリュンヒルデでしょう。

ジークフリートとの蜜月を謳歌する甘い感情、グンター(実は姿を変えたジークフリート)に襲われた時の恐怖と絶望感、ジークフリートに裏切られたと思った時のすさまじい怒り、再びジークフリートの妻として彼の火葬に殉じようとするすべてが昇華しきった安らぎと、感情の起伏の激しいブリュンヒルデを、デボラ・ヴォイトさんは素晴らしい迫力で演じていました。

ザ・マシンと呼ばれる例のハイテク装置を使った演出も見慣れたものとなってきましたが、最後にヴァルハラ炎上のシーンで神々の像が崩れるシーンがなんだかちゃちでしたね。
変な神々の像など出さずに、映像の炎と水の表現だけでも良かったのではないでしょうか。
最後の最後に、「ラインの黄金」の冒頭と全く同じ、暗闇の中、かすかに青く光る背景をバックに24枚のプランクがゆるやかにうねってラインの川面を表現しているシーンに戻るのがとても良く、とりわけ気高く美しい幕切れの音楽と合わさって素晴らしく効果的だっただけに、その前がちょっと残念でした。

考えてみると、ジークフリートはお祖父さんのヴォータンの犯した間違いを正すため、ヴォータンの代わりに指環の呪いを引き受けるためだけに生まれてきたようなもの。
大人にな りきらないまま本人の預かり知らない事情の犠牲になったかと思うとひどく哀れ。
でもこれが息子の名前に付けるぐらいワーグナーお気に入りのキャラクターなんですよね。ニーベルングの指環も、そもそもは「ジークフリートの死」というタイトルで構想されたということなのですから。

 

今回は思い立って、事前に指環全体のライトモチーフについて解説しているCDというのを手に入れて勉強してから見に行ったのですが、これはとても効果的でした。
「神々の黄昏」は最終章だけあって、さまざまなライトモチーフが登場するのでとても面白く聞くことができました。このCDは解説が英語なのがちょっととっつきにくいですが、ライナーノーツにすべての譜例(200近くもあるのです)も出ているのでだいたい理解できると思います。

 

Gotterdammerung_1 ジークフリートと義兄弟となるグンターを演じたイアン・パターソンがノーブルな雰囲気でなかなか素敵でしたが、素顔はなかなかお茶目な人らしく、Twitter(@gibichung) をウォッチしていると面白い発言がたびたび。ジェイ・ハンター・モリス(@JayHunterMorris)との掛け合いも楽しいんです。

「神々の黄昏」のピアノ・ドレス・リハーサルがあった1月21日のTwitter

そして本日の大バカ大賞は、血の義兄弟の二重唱で血を忘れたジェイ・ハンター・モリスと僕自身でした。どっ!

この日は「神々の黄昏」のことをオペラの Game of Thrones だとも言ってますね。

また、2月11日のライブビューイング収録日の少し前、2月7日のやり取りは

イアン・パターソン: あごにニキビができちゃった。

ジェイ・ハンター・モリス: イアン、君は16歳かい? 顔を洗って。

イアン・パターソン: はい、パパ。

そして、2月11日当日には

ジェイ・ハンター・モリス: ヘイ、イアン、ティーンエイジャーのニキビの具合はどう? クローズアップの準備はできた?

とっても仲良さそうですね。happy01

 

【おまけ1】 ニーベルングの指環全体をたった2分半で紹介する爆笑ビデオクリップです。
ちゃんと適切なライトモチーフが使われているところが素晴らしい!

 

【おまけ2】 「ジークフリートの育て方」の記事で、ジェイ・ハンター・モリスが1996年のトニー賞をとった芝居「マスター・クラス」のオリジナルキャストだった話をご紹介していますが、その頃にトニー賞に関連があった人たちが出演する公開セミナーの座談会に出演したビデオクリップを発見しました。

Jhm1996 Working In The Theatre

上記のリンク先で、「19 Performance - September, 1996 」という、リリース日 10/10/25 のクリップを見ることができます。
ここでも、ダラスで「椿姫」を見たことがオペラ歌手を目指すきっかけだったことや、テキサス訛りが話題にされていますね。

[追記] 同じく1996年のミュージカル部門のトニー賞をとった RENT(レント)のアダム・パスカルも出演しています。

twitter/punkt_ochibo

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コメント

ジェイ・ハンター・モリスを検索して、ここにたどり着きました。
私もMET Live Viewingでジークフリートを見てきたので、
この人に注目してます。苦労人がシンデレラ・ボーイ(?)に
なったのは、この人に幸運の神が微笑まざるを得ない状況
だったからでしょう。よくまとまっていて、新しい知識が
増えました。特に、インタビューはよかったですね。Live Viewing
では地声がかすれてましたが、ラジオではそれほどではなく、
あれは歌った後だったからみたいですね。
Thanks!

投稿: Soundbox | 2012.03.08 12:24

Soundboxさん
ブログ記事を読んでくださってありがとうございます。
「ジークフリート」を観てすっかりジェイ・ハンター・モリスが気になる存在になってしまったので、同じような思いの方がいらっしゃるのはとても嬉しいです。
また少し新しい情報を仕入れましたので、こちらもすぐに記事にまとめたいと思いますので、またご覧になってください。

投稿: punkt | 2012.03.08 23:31

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