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METライブビューイング「ジークフリート」

Siegfried_1METライブビューイング ニーベルングの指環 第二夜「ジークフリート」を観ました。

昨シーズン最後のライブビューイングだった「ワルキューレ」がなかなか良かったので、どちらかというと苦手なワーグナーなのですが、続きの話になる「ジークフリート」も見に行く気十分で迎えた今シーズン。

ところがなにやら大変な状況に...

 

新演出の本番初日の1週間前になって、主役のジークフリートを歌うはずだったギャリー・レイマンが体調不良により降板、代役はアンダースタディーのジェイ・ハンター・モリスとの発表があったのです。

ジークフリートはテノールの役の中でも難役中の難役、2回の休憩をはさんで5時間余りの長丁場はほとんど出突っ張り、歌いっぱなし。ワーグナーの分厚いオーケストレーションを突き抜けて歌わなければならないし、3幕の最後ではそこだけ登場する元気なソプラノと長い愛の二重唱を歌わなければならないという大変な役です。

この役を歌える歌手がおいそれといるわけもなく、METではほとんど無名(METのデーターベースによれば、2007年に2ステージだけ、ヤナーチェクの「イェヌーファ」にシュテヴァ役で出演しています。)のジェイ・ハンター・モリスがアンダーから抜擢されて、今シーズン注目の舞台の主役を務めることに。

そんな代役じゃライブビューイングを見に行ってもしょうがないかなぁ、とも思ったのですが、ニューヨーク・タイムズの評などは悪くないじゃありませんか。

初日の翌日、1月の「神々の黄昏」のジークフリートもモリスにキャスト交代とのアナウンスもあり、これはどうやら初日は成功だった様子。

また、ライブビューイングの収録日に Twitter に投稿された感想を見ると、非常に評判が良いのです。これは期待できるかもしれないと思って見に行きました。

Siegfried_2

これが予想以上にとても良かった。
5時間11分があまり長く感じませんでした。

ジェイ・ハンター・モリスのジークフリートは、若々しくてエネルギーに満ち溢れ、とても魅力的。

声が軽すぎるという批評もあるようですが、リリカルな表現は美しく、世間知らずの17歳の若者なのですから、あまり重々しい声よりもむしろ役に合っているような気もします。

水鏡に映った自分の姿から父親の姿を想像し、顔も知らない母親に一人思いを馳せる姿には思わずホロッとさせられましたし、岩山の上の鎧に覆われた人が、男ではなくて美しい女性(ブリュンヒルデ)と知って、それまでまったく恐れを知らなかった彼が、急に恐れと強い憧れとにひどく戸惑う姿の表現も良かったです。

ドレスリハーサルのミニドキュメントや幕間のインタビューも、モリスの愛すべき人柄がよく出ていて、好感度アップ。

かなりの重圧だろうと思うのに楽しくてしょうがないという感じで、リハーサルではへとへとになって1幕ごとに楽屋のソファーにぶっ倒れながらも、幸せそうな笑みをかすかに浮かべながら目を閉じている姿は微笑ましく、思わず最後まで頑張れ!と応援したくなります。

モリス本人が、まさに恐れを知らないジークフリートみたいですね。
小さなあらはいくつかありましたが、最後まできっちりと歌い切ったのはすごいと思います。

インタビューではバケツ何杯分もの幸運に恵まれたし、多くの人たちの支えがあったからこそと話していましたが、ジークフリート役自体の準備は4年前からずっと続けてきたとのことで、単に幸運に恵まれただけではないのは明らか。
シアトルやロサンゼルスの歌劇場でのジークフリートのアンダースタディーから、今年のサンフランシスコでは主役のキャンセルでアンダーからの抜擢でジークフリートを本舞台で歌っていて、この実績が今回の抜擢につながったようです。

NY Times のこちらの記事によれば、1年前にMETのアンダーを引き受けたときはあまり気が進まなかったものの、ほかに仕事がなかったからとあり、地道に努力してきたからこそのチャンスで、見事にそのチャンスをものにしたと言えるでしょう。

それにしても、スタッフの1人がリハーサルの時に代役と聞いて「プロなのか?」と言っていたのにはちょっと笑いました。アマチュアでジークフリートを全曲歌える人なんて普通いないと思いますよ。

さすらい人(ヴォータン)のブリン・ターフェル、ブリュンヒルデのデボラ・ヴォイトや、ミーメ役のゲルハルト・ジーゲルも良かったです。

 

今回も例のザ・マシンを駆使した舞台ですが、今回はそれに3Dの映像を組み合わせた舞台美術が注目です。

小鳥が飛び回るのも見ものですが、特に水の表現と炎の表現はスケールが大きく、実際の舞台を客席で見てみたいと思いました。

「ジークフリート」の上映は、東京や川崎では今週金曜日までですが、横浜では1月末、神戸、広島では2月末とこれからのところもありますので、興味を持たれた方はぜひ。



twitter/punkt_ochibo

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