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メトロポリタン・オペラ「ドン・カルロ」

Don_carlo_pape_as_philip_2メトロポリタン・オペラの東京公演「ドン・カルロ」の2日目(15日)と3日目(18日)の2回を観ました。

健康上の理由と震災による原発事故のせいで、指揮者やキャストのキャンセルによる変更が相次ぎ、波乱含みの幕開けとなった「ドン・カルロ」。

でも何と言っても私のお目当てはルネ・パーペなので、彼が日本に来てくれたのが何より嬉しかったのです。

「ドン・カルロ」 全5幕 イタリア語版

指揮: ファビオ・ルイジ
演出: ジョン・デクスター
ドン・カルロ: ヨンフン・リー
エリザベッタ: マリーナ・ポプラフスカヤ
ロドリーゴ: ディミトリ・ホロストフスキー
エボリ公女: エカテリーナ・グバノヴァ
フィリッポ2世: ルネ・パーペ
宗教裁判長: ステファン・コーツァン

Don_carlo_4 今回の演出は、今シーズンのMetライブビューイングで観た新演出より前の古いバージョンのものとのこと。
重厚な衣装やセットは豪華なタペストリーを見るようですが、新演出に比べると動きが少なく、より絵画的と言えるかもしれません。
  

第1幕のフォンテンブローの森でカルロとエリザベッタが出会うシーンの前に、戦争に疲れ平和を願う民衆たちとエリザベッタが接するシーンがあって、彼女が自分を捨てて和平のために義務を果たそうと決意したのだ、ということがより解るようになっています。

第1幕でのヨンフン・リーは、2回ともちょっと固かったのですが、舞台が進むにつれてどんどん良くなっていき大健闘でした。

まだまだ粗も目立ちますが、声に変な癖がなく美しいし、見た目もすらっとしていて舞台映えがします。
ドン・カルロという役は、とても彼に合っていると思います。
若く一途で、激情にかられやすく、突っ走って周りが見えなくなってしまう王子様にはぴったりで、ライブビューイングで観たアラーニャよりもキャラクター的には合っていると感じましたし、歌のテクニックとかだけでない、こちらに伝わって来る何かがあるのがとても良いと思いました。

カーテンコールでも大きな拍手と歓声をもらっていましたが、今後の活躍を期待したいと思います。

美しい銀髪がトレードマークのホロストフスキーが2幕で登場すると、やはり場内がパッと華やぐ感じがするのはさすがスター歌手。
若いヨンフン・リーとベテランのホロ様とでは、親友同士というよりは保護者的な年の離れた兄と弟のような感じになりますが、これも悪くないです。

この後繰り返しこのテーマが出てくる「友情の二重唱」は、特に18日の出来が素晴らしくて、2人の間の熱い思いが迸るようでとても良かったです。
観客もこれには敏感に反応して、思わず拍手が出ていましたね。

 

Don_carlo_3 パーペのフィリッポ王が舞台に登場すると、何も声を発しなくても、辺りを払う王者の威圧感と貫禄はたいしたもの。
伊達にこの役を長年演じていないというのがよくわかります。

フィリッポ王とロドリーゴが対決するシーンは、実力ある2人の対決シーンで非常に良かったです。
ホロストフスキーの声はかなりスモーキーで、響きが明るめのバスのパーペよりも声が暗くて抜けきれないのが残念だったところもありますが、やはりこの2人だと迫力があって楽しめました。

 

パーペの声の響きはやはり群を抜いて素晴らしいですね。
精一杯張り上げてますという感じがしないのに、豊かな音色がホールの隅々まで響き渡る感じは本当に凄くて、いつまでもこの声を聴いていたいと思わされます。

第4幕はまさにパーペのためにある幕と言っても過言ではありません。
王の孤独、自分に心を開いてくれず、自分を愛してくれない王妃に対する屈折した思いを歌う第4幕冒頭の長いモノローグは胸を打つものがあります。
声としては15日の方がちょっとだけ良かったように私は感じたのですが、伝わってくるものは18日の方が多く、眠れずに思い悩んでいる王の苦悩が胸に迫って感じられて感動しました。

18日のこのモノローグの後の拍手はなかなか鳴りやまないほどでしたから、やはり観客のみなさんも感動されたのだと思います。

エリザベッタ王妃の不貞をなじるシーンでは、新演出では失神した王妃を王がしっかりと抱きかかえておろおろしていましたが、こちらの演出では王は気を失った王妃に触れることもできずにおろおろしているのが興味深かったです。
本当は王妃のことをすごく大事に思っていて愛されたいと思っているのに、実際はどう接していいのかわからなくて、倒れている王妃をちょっと睨んでいるようにしている姿がなんとも哀しげ。

強面のこの王さまは、若い王妃に優しく接することもできないのでしょうね。
あれでは王妃が心を開くはずもないのですが、立ち去り際も、一瞬、王妃の方に手を差し伸べ掛けて引っ込めてしまうところも悲しい。

 

エボリ公女が、自分の美貌を呪うと歌うあのアリア。歌う方によっては思わず失笑、などという失礼な事態にもなるのですが、グバノヴァさんはなかなか綺麗な方なのでそんなことにもならず、とても良かったです。

 

ホロストフスキーの最大の見せ場は、やはりロドリーゴの死の場面でしょう。
カルロのために死ねることを幸福だと言いきるロドリーゴ。
あのシーンの歌は非常に美しくて、ほとんど愛の告白ですよね。
さすがにこのシーンは見せるし聴かせる。

 

ポプラフスカヤさんについてはずいぶん厳しいことを言う人がいるようなのですが、私は彼女の声はけっこう好きです。
少し硬めでストイックな響きですが、気品があって凛としていて、このエリザベッタという役にはむしろ合っていると思います。
ライブビューイングなどのアップの映像で見ると、ちょっとエラが張っているのが目立つので容姿のことをあれこれ言っている人もいましたが、舞台で見るとオペラグラスを通してみてもまったくそんなことは気にならず、気品があってとても美しい方です。

第5幕のエリザベッタの長大なアリアも、細かく見れば粗もありますが、過去を思い切り、娘としての夢を諦めたその悲しい決意が伝わってきてとても良かったです。

主要な登場人物の思いがすべてお互いにすれ違っているという、暗く重いオペラですが、男性の低声部好きの私にとっては男性の重唱の名場面が連続するこのオペラは本当に傑作だと思いますし、今回のMetの公演も十分に堪能いたしました。

いろいろありましたが、日本に来てくれて本当にありがとう。

18日の終演後に楽屋口でのサイン会にも並んで、メインキャストのみなさんにお礼を言ってプログラムにサインを頂いてきました。
長大なオペラですからみなさん疲れているでしょうに、すごく晴れやかな顔でにこやかに応対していただいて嬉しかったです。
パーペのひと際青い目と、あの深々としたバスの美声で言ってもらった「ドモアリガト」が一生の思い出になりました。

 

Cake_rene 【おまけ】
19日までの限定で、帝国ホテルのラウンジでルネ・パーペの声をイメージしたというチョコレートケーキその名も「ルネ」が出されていました。
15日のオペラに行く前に食べに寄ったのですが、底の方にナッツのプラリネが入っていて本当に美味しいケーキでした、
期間限定なんかにしないで、定番メニューにすればいいのに。

と思っていたら、パーペも本当にこのケーキがお気に入りみたいで、公式ブログにもサイン会の後でみんなにこのケーキを振舞ったと写真入りで出てました。

15日の方の様子を伝えた公式ブログもリンクを貼っておきますね。やっぱり舞台化粧は近くで見るものじゃありませんね(笑)

twitter/punkt_ochibo

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