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「ザ・ロード」

Theroad_flyer 「ザ・ロード」
原題: The Road
公式サイト

先週、試写会を見ることができ、今日の初日も見ることができました。

文明が崩壊してから約10年後。太陽は常に分厚い灰色の雲に隠され、動物は死に絶え、植物は枯れ、気候は寒冷化。人々は飢えと寒さで命を失うか、他の人間を食料として狩る人々に襲われるか、絶望して自ら命を絶つか.... そんな絶望的な状況の中で、幼い息子を連れた男が南の海岸を目指してとぼとぼと歩き続ける。

原作は現代アメリカ文学を代表するコーマック・マッカーシーの同名の小説。
2006年のピュリッツァー賞を受賞したアメリカのベストセラーです。

実に重い映画でした。
そしてとても感情を揺さぶられる映画でした。

原作でも映画でも、文明が崩壊した原因についてはいっさい説明がありませんが、核の冬を思わせる薄闇の日々。世界の終末が来るとしたら、きっとこんな風だろうと実感として思えるぐらい、リアルで容赦ない荒涼とした風景。

その中を彷徨う名もなき主人公の男(ヴィゴ・モーテンセン)と息子の少年(コディ・スミット=マクフィー)の、お互いに相手を思い合い、お互いに相手を唯一の支えとしている親子の姿は胸が締め付けられるようです。

主演のヴィゴとコディ君の演技は凄いとしか言いようがありません。

ヴィゴがインタビューで、この映画では感情的にさらけ出さなければならないのが一番のチャレンジだった、というようなことを言っていますが、セリフらしいセリフではないところでの感情の表現は、見ているこちらが辛いほど。
怖れ、悲しみ、絶望が入り混じった感情を一度に表した表情や、息子を心配し慈しむ表情、しぐさ。
ヴィゴの演技の幅には驚嘆させられます。

そしてコディ君。
演技しているとは思えないほどの自然な表情、反応。嫌な咳をしているパパの咳を必死に止めようとする姿や、過去の世界の遺物を初めて目にした時の素直な驚き。
最初は怯えてひたすらパパに縋っている感じだった少年が、自分の考えを主張するように成長していくのがちゃんと表現されている。
恐るべき子ですね。

原作より出番が多いということで賛否両論あったシャーリーズ・セロン扮する回想シーンの男の妻ですが、映画表現としてはバランス良く的確な使い方だと思いました。
夢のシーンが挟まることによって、単調になってしまう現実のシーンにメリハリが付くし、男が妻に対する思いに苛まれていることも良く解り、他の多くの死を選んだ人々を代弁してもいるのですね。

最近よくある終末物の映画とまったく違って、世界が崩壊するさまを派手なCGで描くとか、主人公がバッタバッタと敵をやっつけるとか、そんな部分はいっさいありません。
残酷なシーンを直接映像で表現することはなく、惨劇は間接的に表現されることによってホラー映画にはならずに、この映画には暗いながらも独特の気品が感じられます。

立ち枯れた林などの荒涼たる風景、荒れ果てた住宅、打ち捨てられた高速道路などはすべて実写で、CGは色調の調整など部分的に限定的に使われているだけとのことですが、厳しく寂しい風景は美しくさえあります。

万人向きの映画とは言えず、知り合いに片っ端からオススメするのはなかなか難しいとは思うのですが、少しでも多くの人に見て欲しいと思う映画でした。

【つけたし】 エンドロールのバックに流れるサウンドスケープ(音風景)に耳を澄ましてください。
さらに、映画の冒頭シーンの音にも耳を澄ましてください。

twitter/punkt_ochibo

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コメント

punktさん、お早うございます。

私はシャンテの最後の回で観て来ました。観客は少なかったのですが、若い男性の割合が多いのは、真面目な映画ファンの人達だろうと思いました。
テレビのCMは、朝の「スッキリ」という情報番組で2回見たきりで、気を付けていたのですが他では見かけませんでした。浮動票は端から諦めているのか。せめて、この映画が来ていることだけは映画雑誌を見ない人達にも知らせて欲しいものです。

エンドロールの音の中には、人の話し声も聞こえたと思うのですが、何を話しているのかお分かりになりましたか? 英語が分からないので、どういう場面の音なのかイメージがわかず、そんな自分が情けないという思いが、先に立ってしまいました。

ちなみに試写会の時、私の隣りのご婦人がチラシのお父さんを見て、「この人、どこかで見たのよね。ジーザス・クライストの人だっけ」と言っていました。

投稿: ジャージ | 2010.06.27 08:09

ジャージさん
>エンドロールの音の中には、人の話し声も聞こえたと思うのですが、何を話しているのかお分かりになりましたか?

いえ、私にも何を言っているのかは分かりませんでした。
何気ない日常の生活の音。
これがこんなにも特別に聞こえるということ。
最後まで、心をこめて作られている映画だなと思いました。

>「この人、どこかで見たのよね。ジーザス・クライストの人だっけ」と言っていました。

ヴィゴの痩せて髭を蓄えた姿は、確かにキリストのようにも見えますからね。

投稿: punkt | 2010.06.27 23:39

エンドロールの音には、感銘をうけました。ここにこういれるという発想に、そしてなんてふさわしい音達だと感じて。でも、あえてここにこういう音を監督がいれた意味については考えずに聞いていました。
映画全体については、まだあんまりまとめて考えてないのです。ゆっくりです。

投稿: mizea | 2010.06.28 23:39

mizeaさん
エンドロールにありがちなテーマソングなんて当ててなくて本当に良かった。
監督の原作に対する並々ならぬ尊敬の念があるからなんでしょう。
真っ暗なバックのエンドロールを眺めながら、微かに聞こえてくるさりげない日常の音に耳を澄ましていると、何気ない日常のありがたさが身に沁みてくるようですよね。

投稿: punkt | 2010.06.29 01:08

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