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ヒルコート監督のインタビュー記事

2週間ほど前、スペインの 20minutos.es のこちらに、ヴェネチア映画祭のときに取材されたヒルコート監督のインタビュー記事が載りました。
この内容がなかなか良いからと、viggo-worksのこちらで Zooeyさんが英語に訳してくださっています。

いろいろな映画祭の記者会見で、控え目でとても真面目な印象を受けたヒルコート監督ですが、このインタビューでも、”The Road”を映画化する上で、実にしっかりしたビジョンを持って対応しているのがよくわかります。

とても興味深かったので、ネタバレにかかわる部分を一部省略した以外は、インタビュー部分をほぼ全文をご紹介したいと思います。

 

ジョン・ヒルコート: 私たち人間は原始的な精神を持っている

ヴェネチアの暑さが照り付けているが、オーストラリア人のジョン・ヒルコート(クイーンズランド、1961年)は攻撃的な蚊をともなったリドの息詰まるような湿気についてはすでに経験豊富だ。
今年、このイタリアの映画祭で、彼は2009年のカルト映画の候補である”The Road”を公開する。彼のこれまでの仕事、「プロポジション - 血の誓約」(2005)では、ヒルコートは19世紀のオーストラリアの地方で起きた陰鬱な西部劇に挑戦した。
エクセルシオール・ホテルの一室でこの監督は取材を受けた。鼻にかかった声と素晴らしい落ち着きで、彼は言葉を一つ一つ選びながら質問に答えていた。2007年の小説に対するピューリッツァー賞を受賞したコーマック・マッカーシーの堂々として荒涼とした「ザ・ロード」の、彼のスクリーンへの脚色の複雑さを説明する機会のたびに使おうと、彼は的確な言い回しを探していた。

以前から、マッカーシーの著作はご存知でしたか?

実のところ、「プロポジション」を制作したときにすでに「ブラッド・メリディアン」に非常に大きな影響を受けています。

なぜ”The Road”では、小説で最も迫力のあるシーン(訳注:ネタばれなので詳細を記述している部分は省きますが、とてもショッキングなシーンのことです。)を入れないと決めたのでしょうか?

私たちはそのシーンのテストもまったくしませんでした。この決定は私がしました。視覚化すると目のあたりにすることになります。それはとても肉体的な感覚で、本とは違う力学なのです。どのようにそれを演じても、単にこのような肉体的な感覚を創り出すことは無用なことだと、それでは一線を越えてしまうと私たちは気がついたのです。

予告編は、この映画にあるよりももっと多くのアクションがあるという、ゆがんだイメージを提示しています。どのような動機でこのような印象を与えることになったのでしょうか?

これはとても売り込むのが難しいプロジェクトなのです。これはこの映画を説明しその文脈を述べようという試みなのです。この本を知らない人々を劇場に引き込む必要があって、すでに読んでいる人には必要がありません。この予告編については大論争がありました。でも最初から、この本に関してできる限り最大限の忠実性を維持しようということはいつも明らかでした。これを何か別のものに変えるという発想はまったく持ったことがありませんでした。

このプロジェクトがあなたにオファーされたときのあなたの目的はなんだったのでしょうか?

多くの目的を持つことが可能でしたが、すべてがそれを中心にまわることはただ1つでした。私はこの本に忠実でいたいと思いました。この物語の人間性を維持し続けるのは私にとってとても大きな挑戦でした。最初から最後まで、一つ一つのシーンに父と息子がいるということを肝に銘じて感情の発展を成し遂げることはとても困難でした。

あなたはミュージシャンのニック・ケイヴ(Bad Seeds のバイオリニスト、ウォレン・エリスとともにこのサウンドラックの作曲者)と関係がありますね。古い付き合いで。あなた方はさまざまな仕事で共同で働いていますし、彼は「プロポジション」の脚本家でもありますね。

私たちはた偶然同じ場所に同じ時にいたのです。私は若い頃、やはり撮影することをやっていて、彼はいつもロックバンドにいました。私たちは一緒になって...単純に私たちは馬が合うんです。彼は映画を愛していて、私が知る誰よりも多くの映画を見ています。自由な時間があればいつも、おそらくは1日に2本の映画を見に行くでしょう。二人とも人々の最良と最悪のものを見せてくれる、極端な世界が好きなのです。ニック・ケイヴはマッカーシーの様式にある、叙情的な性質、詩的なものをとても持っています。

大災害の映画や未来的なデストピア(暗黒郷)に舞台を置いた映画がまたブームになっているようですね。この現象について、あなたの解釈はなにかありますか?

私が知らないプロジェクトがたくさんありますね。例えば「2012」とか。今や私たちには環境の崩壊の意識があるのです、一つには私たちはそれを見ていて、それを感じていて、それに気づいているから。そして明らかに私たちはみな経済問題を感じています。私たちはバブルの中に長く居過ぎて、バブルは破裂したのです。

”The Road”に戻って、映画撮影は灰色の色調をベースにし、終末世界の風景を撮影しました。どのようにしてこのような様子に到達したのですか?

私たちはアメリカの完全なツアーをおこなって多くの調査をおこないました。私たちは5つの州にロケ地探しをおこなう5人のクルーがいました。この本は私たちがすでに見ていたことを語っていて、未来のある状況について語っているのではないので妙に見覚えがあったのです。それで私たちはニューオリンズ、かつて噴火した火山地帯のセント・ヘレナ山、灰色の砂の浜辺があるオレゴン、打ち捨てられたハイウェイと鉱山が見つかったペンシルバニアへ行ったのです。

なぜヴィゴ・モーテンセンを主役にと気持ちが傾いたのですか?

彼は体を使って意思を伝える素晴らしい才能を持っています。私はこの父親の人物像として、この旅をすることの信憑性が欲しかったのです。映画の中で、そのキャラクターがあらゆる困難の中の困難や難しい旅をずっと続ける能力があるだろうと、ただ信じられないせいで気が散る感じは嫌でした。ヴィゴには激しさと物事を極限まで進める素晴らしい熱心さがあります。この物語は幅広いレンジの感情と彼が持つ外観を必要とし、彼の激しさは世界大恐慌の時に見られた顔を思い出させます。そしてタフな男たちがゴミになるのを見るのが好きなのです。彼らがそうなるのではなく、でも彼らが穏やかになって人間だと感じられるのが。

どのようなプロセスをたどってこの少年を選んだのでしょうか? 彼はすごくシャーリーズ・セロンに似ていますね。

あの二人には本当の絆があって、彼はどこにでも彼女についていく子でした。コディは撮影中にシャーリーズにものすごく夢中になってしまったんです。彼女は彼に言ってましたよ、「私を口説くのは止めて! あなたはあまりに若いもの!」(笑)

これはちょっと初心な質問のように見えるかもしれませんが...なぜ悪者はそんなにも悪いのでしょうか?

すべてが崩壊した時に起きたことについて話を誰もが聞いたことがあります。それはとてもすぐに起こるのです。例えば、カトリーナの時に私たちはそれを見ました。警察が最初に店を略奪したのです。このようなことは、それを乗り切った人たちから直接私に語られました。人間の行動には、かなりすぐにそれを超えてしまう、ある一線があるのです。歴史は実例でいっぱいです。そのようなことは起きないと私たちが思うたびに、私たちに思いこさせる何かが起きるのです。マッカーシーについて、人間であることは生き残ろうとする原始的な精神を持っていることを描写し、認める能力があることに私は惚れ込んでいます。

これはキャラクター映画なのですか?

これは感動的な物語なんです。父と息子の愛の物語はそれほど豊かでこんなにも素晴らしいので、その他のことはすべて、たやすく消されてしまうのです。もしも私が何とかこの関係を作り出すことができず、この映画の構造が問題になるかもしれないと考えると打ちのめされました。

あなたはまた、シャーリーズ・セロンが主人公たちとともに登場するフラッシュバックに重要性をいろいろと与えましたね。

何か本にはないもの、道程の厳しさと大災害の出現と反対の、彼らが心地よい生活を持っていた穏やかな時を際立たせたいと思いました。私たちの意図は過去の美しいイメージを与えることで、そうすることによって喪失の感情をよく理解することができるのです。

評価の基準点を見出すために、何か他の映画に基準を置きましたか?

これに関連付けることができそうな他の映画を探しましたが、ラブストーリーを見つけることができなかったのでそれはとても難しいことでした。たくさんの暴君的な父親や、父親不在はみつけましたが...なんとか最も近いものは「自転車泥棒」でした。私はいつもドラマの一部で人生の一部である親子の関係を見せたかったのです。

マッカーシーの作品を捕らえるのにガイドになった監督はだれかいますか?

スタンリー・キューブリックが大好きなんです。それが「バリー・リンドン」や「2001年宇宙の旅」であろうとなかろうと、彼はいつも別の世界への旅をする監督です。彼は彼が作ったようにその映画を作り、あなたにパスポートをくれるので、あなたはその世界に入り込むことができて、そこにいる間は何も疑問に思わないのです。その上、キューブリックには周囲の状況とその映画の内容を結合させ、映画のプロットがセットに従属することがないようにする能力があるのです。

以前にご紹介したトロント映画祭のときのヴィゴとコディ君のインタビュー・ビデオクリップで、ヴィゴがコディ君にシャーリーズ・セロンの話題をふってからかってましたが、コディ君が彼女にホの字lovely だったからなんですね。
あ~ぁ、監督さんにばらされちゃった。happy01

本と映像の特性の違いをきちんと押さえながら、できる限り原作に忠実であろうとした監督の意図がとてもよくわかる良いインタビューだと思います。

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コメント

Punktさん、ヒルコート監督のインタビュー翻訳有難うございました。
才能ある監督(DVDで1本しか観てませんけど:笑)が原作の
本質を捉えたビジョンで撮った作品、秀作に仕上がってると確信しました。

日課の如く関連情報リサーチしてたら
ワインスタインのマーケティングの悪いと言うよりひどさは有名のようで。
大多数の見解が今年を代表する1本なのに作品を殺してると。
ヴィゴのパフォーマンスは既にオスカーの靴を履いてるとの声も多かったです(喜)。当然々~♪。
Newトレイラー、キャストが名優揃いなんですから第2弾は
ヒューマン性重点の全く一新したものにすればインパクトあったのに。
ファイナルポスターの安っぽさ。前回のモノクロの方が遥かにナイス!センスで
クオリティも高いです。
唯一良かったのは公開時期変更ですね。
MJの「THIS IS IT」がbox office席捲してますから(笑)。
 
Hello投票そろそろ締め切りですがどうやらグランドファィナルへイケそうです♪。
一時期、離しても1.2時間で900票近く入って抜かれたりして唖然w(゜o゜)w!。
ヴィゴファンの愛が勝ちましたよね(^^)。

投稿: mika | 2009.11.01 14:38

mikaさん
ワインスタインは儲かりさえすればなんでもいいという感じなので、作品の精神なんておそらくほとんど重視していないのでしょう。
オスカーが狙えそうだったら、それは儲けにつながるからプッシュするんでしょうが。
ポスターについては、ネット上で出回っていた初期のものは、少なくともアメリカでは公式のものではなかったと思います。
フランスなどでは、あのモノトーンのものが使われるようですが、ワインスタインのサイトに出てきたポスターは、先日のものが初めてでした。
でも、新しいポスターはちゃんとコディ君の名前がヴィゴの次に同じ大きさで書かれている点を評価したいと思います。
以前に出回っていたものにはコディ君の名前はまったくありませんでしたから。
Helloも後もうちょっとですから、投票しておかないとね。wink

投稿: punkt | 2009.11.01 17:16

Punktさん ワインスタインにマジ(*`ε´*)なんで又出没しました(爆)

>作品の精神なんておそらくほとんど重視していないのでしょう

まさにおっしゃるとおり!。公式サイトにあるゲーム、崇高な原作にあの発想・・・
悪趣味過ぎて呆れましたけど。

>アメリカでは公式のものではなかったと思います。

そうなんですか・・・あのバージョン視覚に訴えて良かったですよね。
コディ君の名前がないことにはイラっときたけど。ただ一部ではパ○リかもと(汗)。
公式のものは予備知識がない広告代理店の友人に感想訊いたら
構図&配色全てダサイと。コミック雑誌の表紙のようと(爆)。
おまけに「子連れのサバイバル映画か?」でした。大間違いのコンセプトΣ(´o`;|||)。

>オスカーが狙えそうだったら、それは儲けにつながるからプッシュするんでしょうが。

芸術を軽視し利益追求のその手法は嫌われてるみたいでした(滝汗)。
無冠のまま終わりbox officeコケたら配給会社がワインスタインだった事が最大の不幸だったと思いますぅ~(T▽T)。
 
最近どの予想サイトも根拠薄弱と判かったのでシカト(笑)。
微妙に違うんで2サイトの翻訳ツールかけ読んでるんですが
(Punktさんの翻訳のように一言一句的確な言葉選びで活きてる見事な文章とは雲泥の差だけど)文章力に富み説得力あるレビューを書いてる方々は
こぞってヴィゴの演技を絶賛してました。上手くいけばオスカー像を手にするかも知れないとも。下馬評と違いますね(笑)。面白いことに高名じゃない批評家、一般のブロガーの方が着眼点が鋭く素晴らしいレビュー書いてたりします。
 
眼差しに魂の深遠を宿す感情表現ヴィゴしか演じられないです。
きっと同業者ならどんなに凄い演技か一番判る筈。そこに期待掛けてます(笑)。
オスカー是非ヴィゴに獲らせたいで~す(笑)。あっノミでも嬉しいけど。
ワークスさんもアピールしてくれてまっす\(*^〇^)/。

投稿: mika | 2009.11.02 17:39

mikaさん
ワインスタインのやり方は、文句を言っても疲れるだけですから半ばあきらめています。

配給会社としては、特別に宣伝しなくても見に来るヴィゴファンや、原作ファンへの対応よりも、興味を持ってくれなければお金を払って見てはくれないそれ以外の観客をどう劇場におびきよせるかが非常に重要なのだということはよくわかります。
そのためならなんだってする、というのもビジネスとしてみればわからないでもないのですが...

それでも、オスカー獲りに本気になれば、昨年もケイト・ウィンスレットに主演女優賞を獲らせることに成功したわけですから...お手並み拝見。

映画賞にからむかどうかは、やはり11月25日の全米公開後の一般的な評価がどうなるか、気になるところですね。

投稿: punkt | 2009.11.02 22:31

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