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ヴィゴ・モーテンセンの隠れた側面

Criticadelaargentina20090701Perceval Press から出版された、アルゼンチンの現代詩のアンソロジーの出版に合わせて、いろいろ記事がでてきていますが、Diario Crítica de la Argentina 7月1日付けの記事にはヴィゴのインタビュー(メールインタビューのようです)が載っています。

この記事を、viggo-works の Gracielaさん、Remolinaさん、Sageさん、Zooeyさんのみなさんが英語にしてくださいました。
すでに他で読んだ記事も入っていますが、なかなか興味深い内容なので、頑張って全部訳してみました。(ところどころ、元のスペイン語から辞書をひいて言葉を選んだ箇所があります。)

ただし、詩の翻訳についてはほとんどただの直訳でとても詩の翻訳にはなっていないので、原文のスペイン語を載せておきます。音のリズムは元のスペイン語でないと感じがつかめないと思いますので。

 

詩人、出版人そして熱心な読者
ヴィゴ・モーテンセンの隠れた側面

               by Fernanda Nicolini

ロード・オブ・ザ・リングのスター、そして良く知られたサンロレンソ・ファンは他にも多くの興味を持っている。彼はティーンエイジャーの頃から詩を書き、自分自身の出版社をアメリカに持っている。彼はちょうどアルゼンチンの詩人たちのアンソロジーを出版した。

 

私たちはみな、ヴィゴ・モーテンセンが非常に魅力的なロード・オブ・ザ・リングのヒーロー、アラゴルンであることを知っている。そしてまた、そのタトゥーが施された体が私たちに彼の暴力的な過去を物語っているデイヴィッド・クローネンバーグの最近のお守り、赤と青の旗をオスカーのセレモニーに持っていったサンロレンソ・ファン、そしてチャコで子供時代にスペイン語を話すことを学んだほとんどアルゼンチン人。

しかし、ヴィゴには彼の演技で生計を立て、絵を描き、写真を撮り、音楽家であり、執筆するルネッサンスマンという別の側面があり、彼自身の出版社を持っていて、その出版社は(注目!)ちょうどアルゼンチンの詩のアンソロジーを出版した。

「ケヴィン・パワーがこれらのアルゼンチンの詩人たちを紹介してくれたんだ。彼はとても面白くて変わった男で、パーシヴァル・プレスのいくつかのプロジェクトで一緒に仕事をした。キューバの芸術についての本、ヘンリー・エリックの本2冊、アイスランドの芸術家 Georg Gudni の Strange Familiar、それに私が2001年におこなった展覧会のカタログ、Signlanguage だ。」とヴィゴは私たちにメールで語った。パーシヴァル・プレスの本は Amazon.com で購入可能。

モーテンセンの出版社の最近の本、ANTOLOGIA DE LA NUEVA POESÍA ARGENTINA(新しいアルゼンチンの詩)は、いわゆる90年代の詩人、22人 - たとえば、Gabriela Bejerman、Fabián Casas、Washington Cucurto、Martín Gambarotta、Fernanda Laguna、Damián Ríos、Laura Wittner - を美しい1冊のハードカバーにまとめている。

だが、これがヴィゴの寛大な手に届くまでにはいささか険しい道をたどった。

話は4年前にさかのぼる。文化的扇動者で Vox の編集者のグスターボ・ロペスは、このアンソロジーをメキシコで出版するために準備していた。そのプロジェクトは頓挫し、ロペスはそれについてケヴィン・パワーと話し合った。ケヴィン・パワーはこの話に関係するほかに、マドリッドのソフィア王妃美術館(訳注:国立ソフィア王妃芸術センターのことですね。)の副理事として働いている美術評論家として良く知られている。パワーは彼に、それに資金提供することに興味を持つであろう友人がいると話した。

少しして、バイアブランカのロペスのところに電話をかけてきた人物がいた。彼はヴィゴ・モーテンセンだと自己紹介して、その本の出版を引き受けたいと提案した。ロペスは彼が誰の代理なのか尋ねさえしたのに、娘がその名前を聞いて「パパ、アラゴルンよ。ロード・オブ・ザ・リングの。」と言うまで自分が誰と話をしているか分かっていなかった。

「それまで私のアルゼンチンの詩人との関係は、Alfonsina Storni のようないくつかの古い詩の詩人と、いわゆる新しいものが少しだった。」とヴィゴは説明する。「グスターボの編集によるこのアンソロジーに含まれる詩人たちの作品とのつながりは比較的最近のものだ。私が個人的に会ったことがある唯一の人物はファビアン・カサスで、ボエド出身のハンサムで学識のある男で、私よりももっと熱狂的なサンロレンソのファンでもある。明らかに私は読んだすべてを気に入ったので、これは パーシヴァル・プレス から出版されることになった。」

その時点で挫折していた文学上のプロジェクトのいわばパトロンになることのほかに、ヴィゴは11冊の本を出版している。彼が言うには、書くことはある種の現実逃避の役目を果たし、また同時に癒しになる。「私は詩や物語を思春期の頃から書いていて、それはいつも、私がとっても好きな何か、多角的な視点から人生を見るための旅のある方法のように感じられた。それはまた、明確な救済がないように見える難しい瞬間や状況から逃避する方法にもなり得た。それは自分に何がおこっているのか理解し学ぶ方法なんだ。」

彼の詩のいくつかはスペイン語で書かれていて、3歳から11歳の間の彼の人生の地理学を呼び起こしている。1995年の ”Chaco”(チャコ)のように。

 Me cago en la selva
 Como los monos
 Con sus dientes
 Perfectos y amarillos
 Sin tenerle miedo
 A ningún tigre

 私は森の中で排便した
 サルたちのように
 彼らの歯を持って
 申し分なく黄色
 まったく恐れもなく
 虎もなく

(訳注:最後の tigre という単語は、虎あるいはジャガーという意味のほかに、トイレという意味もあるらしいので両方を掛けてあるのかもしれません。)

「私はこれを、自分の子供時代を考えている時に書いたんだ。子供は精神的にも肉体的にも強さを持っている。大胆さ、無邪気な勇気、先入観のなさ、自然との本能的なつながり、私の周りの環境の中でそれは私を脅かしもし抱きしめもする。」と彼は言った。

- どの著者に興味を持っていますか?

たくさん、たくさんの著者だよ。私は読むことができるあらゆるものを読むんだ。運に任せて私の前を横切ったものを何でもね。時には本、物語や詩で気に入ったものを読み返す。今は3冊の本を読んでいる。Gretchen Peters の ”Seeds of terror” はアルカイダの経済のいわば燃料である麻薬取引について、文学、哲学と芸術におけるメディアについてのエッセイ集、そして『頭の体操』としてウィトゲンシュタインの「確実性の問題」。また、Octavio Paz、Billy Collins、Jaime Sabines、Charles Bukowski、Julio Cortázar、Mario Benedetti、John Ashbery、Artaud の詩も再読している。」

(訳注: Gretchen Peters の ”Seeds of terror”  は、Perceval Press の WE RECOMMEND のページでも紹介されています。)

- あなたのセレブリティーの側面と詩的な傾向をどのように調査させているのですか? そのような状況の中で詩を書くということはどのような意味があるのでしょうか?

私にとって、撮影やもっと正確に言うならばプロモーションの仕事としての撮影や、ジャーナリストやファンとの交流はたくさんの時間とエネルギーが必要になるので、それは時々困難になる。だが、できる時に、飛行機の中で、撮影で忙しい時期の夜、私は書き続けている。たまに、詩が自分のところにやってきたのにそれを書くエネルギーがないことがある。そして詩は去ってしまい、消えてしまう。おそらく永遠に。そんなものだ。時々、映画の制作やプロモーションについて、自分の人生で起こったことについて、いろいろな場合に自分が感じたことについて、奇異に感じたり困惑したことについて、何か書くこともある。いつも系図についての論文や個人的なトラブルについてというわけではない。少し映画についてと自分の人生について語った1991年の詩は”Montaje”(モンタージュ)という。

 Media-alma en tránsito
 el hombre que fuiste
 por una breve temporada
 ha sido podado
 removido
 a un bien acicalado cementerio
 que huele a palomitas

 移り変わる途中の半分の魂
 あなただった男
 短い一つの季節の間に
 刈り込まれ
 取り除かれ
 良く手入れされた墓場に
 それはポップコーンのような匂いがする

- アルゼンチンで他のプロジェクトはありますか?

しばらくの間、私たちはアルゼンチン北部とパラグアイで仕事をしていて、3冊の本がその成果となるだろう。1冊は Max Schmidt が約100年前に、Branislava Susnik が約50年前に、グラン・チャコとして知られている地域でおこなった写真と研究を元にしたもの。別の1冊はサルタ州の北部地区から、さまざまな先住民族によって撮影された写真によって構成されている。そして3番目のプロジェクトは、Wichí(訳注:アルゼンチン北部とボリビアに住む先住民)について John Palmer が行った仕事に関連するものだ。

- どような種類の本をパーシヴァル・プレスから出版したいと思っているのでしょうか?

私は自分の出版物を、私が読む物を決めるのと同じ方法で選んでいる。あちこち、少しずつ、はっきりした方針はない。それでも、私たちは決してプロジェクトが種切れになることはないよ。

頭の体操としてウィトゲンシュタインを読んでいる、というのは恐れ入りますが、手当たり次第なんでも読むとか、同時に3冊読むというのは本の虫共通の行動パターンで、私も以前はそうでしたから良く理解できます。happy01
12月の舞台に向けて、メディアの研究も余念がないようですね。

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コメント

punkt様
私も本好きで、絶えず何かしら読みさしを抱えていたものです。だのに最近は、目が悪くなって来た事もあり、借りた本すら読み切れず返却することも。
ダメですね。ビィゴを見習わなくては!

投稿: 椀子 | 2009.07.05 15:06

椀子さん
私も昔に比べたら、ずいぶん読書量が減っちゃいました。
常に好奇心いっぱいであること、というのが若さの秘訣かもしれませんね。

投稿: punkt | 2009.07.05 17:50

punktさん
同時に3冊、言語も違うんでしょうか? 
ヴィゴの頭の中は、どれほど複雑なんだか…
昔も今も、私は一度に一冊しか本は読めません~(汗;)

こうやって充電したら、秋には元気な姿を見せてほしいですね。

投稿: spring | 2009.07.05 22:07

 翻訳ありがとうございます。 出版のことは、映画のように記者発表などがあるわけではないので、実際に出版があるまで全然わからないわけですが、こうやってインタビューで出版予定が出てくるのは珍しい。興味深い。読めないのが悲しい(T_T)

>文学上のプロジェクトのいわばパトロンになる

 この言葉、「パトロン」。 ほんとにそうですね。 ヴィゴの出版活動って、本を出して稼ごうという意志は少なめのようですし。  パトロンとして作家や芸術家に直接お金を出すということはしないけれど、ほんとにやっていることは「いわばパトロン」ですね。

投稿: mizea | 2009.07.05 23:03

springさん
>同時に3冊、言語も違うんでしょうか?
この間は言語が違うものを3冊並行で読んでいましたよね。
おそらくものすごく読むスピードも速いと思いますよ。
ばっちりと充電して次の飛躍のステップにして欲しいですね。

mizeaさん
>いわばパトロン
そうなんですよね。世の中に認められていない芸術家たちの本を出版する、ということを使命にしていますから。

投稿: punkt | 2009.07.06 00:38

ウィトゲンシュタインのくだり、私も恐れ入りました!
ヴィゴって、感性の人のようなイメージが一方でありますが、やはりかなり論理的な人なのだと再認識しました。
すごいな~!あんなに忙しいのに!
本当にかないません!
日常の雑事に振り回されている自分がめっちゃ小さい。
今日もまたヴィゴに元気とやる気をもらいました!

投稿: ぴよ | 2009.07.07 19:30

ぴよさん
ウィトゲンシュタインですが、さっそく Perceval Press のトップページでヴィゴがいくつか引用してますよ。
どうやらヴィゴのお気に入りの本になりそうですね。

投稿: punkt | 2009.07.07 23:37

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