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「イースタン・プロミス」に関するどうでもよい考察

今日、会社の帰りにまた「イースタン・プロミス」を見てきました。
今度は、109シネマズMM横浜。

ここでもイースタン・プロミスのパネル展をやっているはずなのに見当たらないと思ったら、なんと売店の内側の壁に貼ってありました。

目の高さなのでこんどは見やすい。
撮影風景の写真で、ニコライがタトゥーを入れるシーンの前後と思われるモノクロ写真。撮影準備中らしく、ヴィゴが裸の肩にバスタオルのようなものを羽織っていると思ったら、いつものあの、サンロレンソの旗を羽織っていました。smile
本当に、文字通り肌身離さずなんですね。

たっぷりとイースタン・プロミスの世界に浸ったところで、いくつか気になっているポイントに触れたいと思います。

けっこういろいろネタバレなので、続きのほうに書きます。
まだご覧になっていない方は、ご注意くださいませ。

 

 

 

<時間軸のずれ>

この映画のストーリーは、クリスマスの頃から新年を迎える頃まで。
映画の冒頭、タチアナの死とクリスティーナの誕生が、12月20日の夜中であることがわかります。

でも、その翌日と思われるレストランや、アンナのお母さんの家のシーンはクリスマスディナーのシーン。それに、映画の本編ではなくなってしまいましたが、US版の最初の予告編では、レストランの外でのアンナのセリフに「クリスマスでどこも閉まっている」というのがあったりして、12月21日だとするとちょっと変だなぁ、と思っていました。

映画の脚本の方を見直してみたら、タチアナの死とクリスティーナ誕生のシーンでの日時確認のセリフは12月24日になっていました。
元々は、クリスマスイヴの夜中だったんですね。
これなら、翌日は25日のクリスマスなので、他のシーンの辻褄が合うわけです。

ではなぜ、最終的にクリスティーナの誕生を20日にしたのか?
ストーリーをカレンダーに当てはめていくと、どう考えても24日スタートだとラストシーンは新年を迎える頃よりも後にずれてしまうんです。
話の展開がスピーディーなので気にならないのですが、細かく話を追っていくと1週間ではどうしても収まらない。ちょっと苦しかったですね。

 

<キリスト教的シンボル>

クリスマスに生まれたクリスティーナを守るのは、アンナとニコライ。
アンナは聖母マリアの母である、聖アンナ(子供に恵まれない人や出産の守護聖人)ですし、ニコライはサンタクロースのモデルとも言われる聖ニコラウス。聖ニコラウスは子供の守護聖人ですから、この役の本当の性格を現しているとも言えるでしょう。

ニコライがキリルに強要されて抱いた娘にお金とともに渡すイコンのカード。
元の脚本にはイコンのカードは出てきません。
ヴィゴが役の掘り下げのためにロシアに行ったさいに、イコンのカードも持って帰ってきたとインタビューで言っていましたから、このカードはおそらくヴィゴが持ち込んだものでしょう。

(ちなみに、このシーンでは、娘がウクライナ出身とわかった後、ニコライはロシア語からウクライナ語に切り替えて話をしているんだそうです。私には区別がつきませんが。)

このカードの聖人(赤い服の女性)が誰なのかということが、アメリカで公開直後にviggo-worksで話題になっていたのですが、そうしたら絶妙のタイミングで、Perceval Press のトップページにイコンの紹介が載ったのです。(viggo-worksのこちらにコピーがあります。)

赤い服の聖アンナのイコンが紹介されていますが、あのカードは聖アンナだったのでしょうか? それとも、アンナとニコライを紹介したのか?

ニコライは、最後にアンナにクリスティーナを渡して別れる前に、クリスティーナに祝福のしぐさ(頭のところで十字を切る)をします。これも、元のシナリオにはないので、ヴィゴの解釈による演技だと思います。

非情で何物にも心を動かされないように見えるニコライですが、実は以外に信心深いのかもしれませんね。

セミオンを王にたとえるセリフが出てきますが、王が自分の地位をおびやかすと考えて赤子を殺すように命じるというのも、聖書のキリスト降誕時の話を連想させます。

 

<ウォーリービーズ>

タトゥーを入れるシーンやラストシーンでニコライが手にしている石を糸でつないだもの。
Worry Beads というものだそうです。

お祈りの数珠(ロザリオ)に似ていますが、これは単に手持ち無沙汰なときの時間つぶしや、ストレスを除く手すさびのためのものとのこと。
シャーペン回しとか、プチプチとか、そんな感じのものなんですね。

これも、ヴィゴのインタビューによると、ヴィゴ自身がロシアから持ってきたもの。ロシアの刑務所でライターを溶かして作られたものだそうです。

 

<ラストシーン>

この先どうなるのか、余韻を残す秀逸なラストシーン。
ニコライのネクタイに注目。
それ以前のシーンでは、ニコライが身に着けているものといえば、黒かグレー。
それがこのシーンでははじめて白いシャツに赤いネクタイ。
赤は権力をあらわす色。つまりニコライの地位が上がったことを表しているのですね。

平和で幸福そうなアンナの一家のシーンの後で、孤独なニコライのシーンが来るわけですが、viggo-worksでアンナ一家のシーンは、一人物思いにふけるニコライの夢想ではないか、という意見があったのが面白かったです。
なるほど、そういう解釈もあるかもしれませんね。

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コメント

punktさん
ニコライの名の由来がサンタクロースと知って、ハンバーガーショップで
会った場面を思い出しました。
入ってきたドアに、サンタのかわいいシールが張ってあったんです。
そこに、あの黒スーツ黒サングラスですから、思わず吹いてしまう
数少ない場面です。

ウォーリービーズ、あれはそういう物だったんですね。
ニコライがプチプチ潰していたら、かわいいかも?(爆)

投稿: spring | 2008.06.20 16:52

punktさま
こんばんわ。お仕事帰りに寄れる劇場がおありでうらやましいです。
拡大上映すれば良いのにっと思っております。

イースタン・プロミスに関する考察とても興味深かったです。あの石の連なったものはウォリービーンズというのですか!妙に気になっていたのでスッキリいたしました。(この映画は隅々までメッセージがある気がして)
ありがとうございます。

こんなにも自分で解釈できるのに、一つの作品として道筋がしっかりしている映画はあまりない気がいたします。
ですので色々な方の見解を聞いてみたくなります。あのラストはそのような解釈もあるですね〜。
思い出すとまた観たくなってきます!何回でもみれる作品ですね。

投稿: Akemi | 2008.06.20 22:43

ラストシーンの解釈に「ニコライの夢想」というのは、なかなか独創的ですね。
孤独にじっと耐えるニコライ→涙を浮かべるラストの写真がありましたが、自分が失ったもののかわりに幸福なアンナ一家を思い浮かべると考えると涙の意味も理解できそう。

公開後の映画レビューのブログなど見ると、特にファンという方でなくともヴィゴの存在感を絶賛してるのがうれしいです。
ヴィゴの小技secretがじわじわ効いてきましたね(笑)

投稿: アンバー | 2008.06.20 23:13

Punktさん、詳細な解説ありがとうございます!

タチアナの死を確認する際、「12月20日」と言ってたのに、クリスティーナの名の由来を「クリスマスに生まれたから」と言っているのが引っかかっていました。
確かに、5日間の出来事ではあまりにもですよね(^^;

そして、<ウォーリービーズ>!もう、とっても気になってました。それ自体には宗教的な意味は無いのですね。何を溶かして作られているのでしょう?ライターの火で溶けるものかぁ。

投稿: nao | 2008.06.21 00:12

springさん
>ニコライがプチプチ潰していたら、かわいいかも?(爆)
あのウォーリー・ビーズだからこそ渋いのであって、プチプチ潰してたらマンガになっちゃいますよ。happy02

Akemiさん
この映画は見た後、いつまでもいろいろなことを考えてしまう映画なんですよね。
いろいろな見方ができるし、噛めば噛むほど味が出るんです。

アンバーさん
最後のシーンでニコライが何を考えているのか、これからニコライはどうしようとしているのか、いろいろな解釈ができるし、それがまたこの映画が素晴らしい点なんですよね。

naoさん
ニコライのウォーリービーズは、ライターそのもの(おそらく100円ライターみたいなプラスチック製のもの)を融かして作られているようです。
一見、琥珀かなんかのように見えますが、実は廃品利用で作られたものなんですね。

投稿: punkt | 2008.06.21 00:38

はじめまして。
「イースタン・プロミス」、2回見ました。
とてもよかったです。
イコンが投げられたところは感動しました。
あのあとすぐアンナが赤ちゃんを抱っこしてるカットでしたね。
また、「ウオーリービーズ」、ロザリオかと思ったけど輪になってないしなんだろう・・と思ってました。ありがとうございます。
さらに、イコンもビーズもヴィゴの演出だったとは・・・
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』を見てこの人はただものじゃないと思いましたがほんとにすばらしい!
当分、この映画とヴィゴのことで頭がいっぱいになりそうです。

投稿: ゆずきり | 2008.06.21 01:39

ぷんくとさん、こんにちは。
EPを見た後に、会社のロシア人の友人も見たというので色々と質問をしました。
随分前の事なので、よく覚えていませんが...
イコン(アイコン)の絵が女性だったのは、聖母的な意味でロシアでは「旅のお守り」などに良く渡されるそうです。
それでアイコンが男の人の絵の時には...あ~何だっけなぁ~??確か、ビジネスが上手く行く様に?...みたいな意味だったと思います。
それから友人曰く...「あぁ、これはありえるな」って事と、「これは絶対にありえない。」っていうのがハッキリしてるって言っていました。
理由も聞きましたが、まぁ日本のやくざに置き換えても同じ事が言えそうだったので、納得してしまいました。
ただ、売春に関しては、本当に大変な状況になっているところもあるって言っていました。

投稿: Ushi | 2008.06.21 18:42

ゆきずりさん
イコンは、ニコライの人間的な面が垣間見えるよい小道具ですよね。
ウォーリービーズも含めて、ああいう細部に凝ることによって、ニコライの人間像に奥行きや厚みがでてくるんだと思います。
スクリーンにかかっているうちに、あと何回か見に行かなければ。

投稿: punkt | 2008.06.21 18:42

今日で試写会入れて4回観ましたが、時間軸のずれはたしかに引っかかります。
意識して観ていくと、冒頭の日付はやはり24日の方が良かったのでは、と思ってしまいます。でないと、ニコライの「クリスマスプレゼント」もいまひとつ曖昧になってしまうし。
最後の最後、編集段階で冒頭を変えてしまったのかなあ、という印象ですね。

あと、それに関連して気になっているのは、お店や病院のクリスマスの飾り付け。ずっと飾ってありますね。
日本ではクリスマスが終わると一斉に新年飾りに変わりますが、イギリスではどうなんでしょう?

ところで、「ザ・ロード」の翻訳を読みました。
パパは「火を運ぶ人」なんですね〜。
『火を持って歩く人』のラコタ名を持つびごさんとしては、そういう意味でもオファーを断るワケにいかないはず。と、すっかり納得してしまいました!

投稿: mate_tea | 2008.06.21 23:24

Ushiさん
へえ~、一般的に女性の聖人のイコンだったら、とか男性の聖人のイコンだったら、というのがあるのですか。
人身売買のようにして無理やり売春させるという話は、日本でも似たような話が起きているようですね。
とんでもないことです。

mate_teaさん
イギリスに限らず、西欧ではクリスマスは少なくとも1月6日のエピファニー(公現祭:東方の3人の博士がイエスの誕生を祝して贈り物を持って来た日)まで続きます。bell
ヨーロッパでは、クリスマスプレゼントは3人の博士の話にちなんて、1月6日に渡すところも多いそうですよ。
ですから、当然のことながらクリスマスの飾りは1月6日までは飾るはずです。

キリスト教でも、ロシアなど正教の場合は、正教の暦が古いユリウス暦を使っているために日付のずれがあって、ユリウス暦の12月25日が現在の暦では1月7日になっているのだそうです。
ですから、現在、ロシア正教ではクリスマスは1月7日にお祝いします。
そういう点から言うと、EPでロシア系移民の人たちが12月25日にクリスマスパーティーをするのはちょっと?なのですが、郷に入っては郷に従えで、ロンドン流にクリスマス休暇を過ごすから12月25日と解釈するべきなのでしょう。

>「火を運ぶ人」
そうらしいですね。ショッピングカートといい、まさにヴィゴのために存在する役といえましょう。

投稿: punkt | 2008.06.21 23:51

 いろいろこまごまと、しかし実に興味深い情報をありがとうございます。 日にちについては、やはり気になっていました。
 アンナとニコライの名前については特に興味深い。キリスト教の知識豊富な方なら、映画冒頭ですっとわかることなんでしょうね。

投稿: mizea | 2008.06.22 22:00

mizeaさん
日にちについては、ちょっとあれ? って思いますよね。
クローネンバーグ監督自身は無神論者だそうですが、欧米の方にとってクリスマスに関係がある名前はすぐにピンとくるでしょうからね。

投稿: punkt | 2008.06.22 22:54

クリスマスについての解説、ありがとうございました。
今日も観てまいりましたが、やはり初日はクリスマスイブで、ラストのキリルの「ハッピーニューイヤー!」だけ取っちゃえば良かったのに、と勝手に結論付けてしまいました(笑)

今日はソ連滞在歴のある友人と一緒に観たので、いろいろ細かい点を教えてもらいましたが、彼女も、ロシア系なのに12月25日にクリスマスパーティ? とちょっと不思議がっていましたよ。
最近はイギリスに合わせるようになったのかな、と思ったそうです。

投稿: mate_tea | 2008.06.22 23:31

mate_teaさん
やはりクリスマスはじまりでないとしっくりこないですよね。
映画を最初に見たときは、そこまで把握してなかったので気にならなかったのですが、繰り返し見ると、だんだん細かいことが気になってきて(笑)

おお、やはりソ連にいらっしゃったことがある方は、クリスマスが12月25日というのは変だと思われたのですね。

投稿: punkt | 2008.06.23 22:42

こんにちは、はじめまして!
先日、再上映でやっと「イースタン・プロミス」を見た者なのですが。

「本筋ではないが気にかかっていたこと」がここを読んですっきりしました~。
こういうのって気になっても知識がないと理解できないので、
こういう風に書いていただけると、とっても納得でした。

僭越ながらわたしのblogの方で文中リンク貼らせていただきましたので…
もしご迷惑だったらおっしゃってくださいね!

それでは…面白い考察を読ませていただいて、どうもありがとうございました。

投稿: kema | 2009.02.09 12:59

kemaさん
こちらこそはじめまして。
丁寧にこちらのブログをリンク・紹介してくださってありがとうございます。
重箱の隅をつつくような考察でも、お役に立ててなによりです。

投稿: punkt | 2009.02.09 23:26

はじめまして。
こちらの記事を読ませていただいて、再度映画を観ましたら、より感慨深いものがありました。
何気ない小道具が示していることも、話されてる言語についても、色々知ったうえで映画を楽しめたのは、こちらの記事のおかげだと思っています。
事後承諾で申し訳ありませんが、私の拙ブログでも、文中にリンクして紹介させていただきました。
問題ありましたら、おっしゃってください。

Punktさんの「イースタン・プロミス」の最初の感想を拝読したいと思って、
2008年の4月、5月、6月を探してみましたが解りませんでした。

それにしても、ヴィゴに関するあらゆる情報を集めてらっしゃって、ほんとにすごいですね~
私は、ヴィゴ初心者なのですが、彼の撮る写真をぜひ観てみたいと思いました。
「GOOD」についてもこちらで知ったのですが、日本公開はちゃんと決定してるのでしょうか?
検索しても解らず、やきもきしています。
初めておじゃまして、長文のコメント、申し訳ありません。

投稿: do-little | 2009.02.26 01:53

do-littleさん
こちらこそ、はじめまして。
ブログで丁寧にご紹介いただき、ありがとうございました。

>Punktさんの「イースタン・プロミス」の最初の感想を拝読したいと思って、
>2008年の4月、5月、6月を探してみましたが解りませんでした。
私は2007年の9月にトロント映画祭でのワールドプレミアを観にいったものですから、この映画の最初の感想は、2007年9月と10月のところにあります。
カテゴリーで TIFF を選んでいただき、トロント映画祭レポートの第3日目、第4日目、 第9日目をご覧ください。トロントでは3回この映画をみました。

「GOOD」の日本上映については、まだ何も決まったものはないと思います。私もぜひ見たいと思っているのですが、アメリカの公開状況を見ると、かなり厳しいかもしれません。

これからも、どうぞよろしく。

投稿: punkt | 2009.02.27 00:16

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