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フランス版 PREMIERE の記事

昨日ご紹介した、フランス版 PREMIERE 6月号の記事ですが、viggo-works の Chrissiejaneさんが、早速フランス語から英語に翻訳してくださいました。

一部ネタバレを含みますが、映画 ”The Road” についてなかなかよくわかる記事なので、がんばって全部を訳してご紹介いたします。

なお、コーマック・マッカーシー原作の ”The Road” は、6月15日に早川書房より日本語版「ザ・ロード」として単行本が出版される予定ですので、訳文中でも原作の本のタイトルは、「ザ・ロード」としておきました。

 

「ザ・ロード」再び

悲しむべき日: 天気は素晴らしかった。ジョン・ヒルコートはリラックスしていたが、この思いがけない不運を面白がって皮肉に感じていた。この早春のまばゆい日の光は、彼と彼の映画 "The Road" の制作にとって脅威だった。この映画では、すべての演技は薄暗い日々の中でおこなわれる - すなわち、今日とは正反対だ。

コーマック・マッカーシーの小説を脚色した話は、終末後の世界における、ある一人の父親と彼の息子の放浪を追っている。気候が悪化していることを感じて、小説では厳粛にただ「男」と「少年」と名づけられているこの二人は、彼らが生き延びられる可能性があるかもしれない、もっと良い気候の海岸への旅を企てる。そして、ちょうどこの登場人物たちが彼らの冬から逃れるように、ジョン・ヒルコートは春から逃れようとしている。

アメリカ、カナダ、ヨーロッパで育った映画制作者ヒルコートは、彼の出身地オーストラリアでミュージックビデオ、特に長年関係を続けているニック・ケイヴの撮影でデビューした。彼の最初の長編映画は、1990年の「亡霊の檻」で、現在もこれまで撮影された中で最も強烈な刑務所映画との評判を得ている。忘れがたい Tcheky Caryo出演、1996年の "To Have and To Hold" の後、ヒルコートは2005年に、ニック・ケイヴによって書かれ、ガイ・ピアース、レイ・ウィンストン、ジョン・ハートとエミリー・ワトソン出演のオーストラリアの西部劇「プロポジション -血の誓約-」で戻ってきた。第一級の映画だがフランスでは注目されなかった。

"The Road" は彼の初めてのアメリカ映画である。小説の作者、コーマック・マッカーシー(彼の小説はすでに映画に脚色されている。ビリー・ボブ・ソーントンによる「すべての美しい馬」と、コーエン兄弟による「ノーカントリー」)の評判のせいで、それは非常に急速に上手くいった。ヒルコートはこの著者の長年にわたるファンで、マッカーシーの小説 「ブラッド・メリディアン」(1985)などは、非常に「プロポジション」に影響を与えている。2006年にアメリカで「ザ・ロード」が出版される直前に、ヒルコートは書評を読み、それが彼の心をとらえた。「私は極限状態の世界が好きだし、いつもマッカーシーがそうであるように、周囲の状況と風景が必要不可欠な役柄をになっているのも好きだ。この「ザ・ロード」の他との違いは、もう少し個人的で感情的なところかもしれない。」 スクリプトを書く脚本家としてジョー・ペンホールを得るやいなや、ヒルコートは資金を手に入れ、プロジェクトは青信号がともった。

 

荒廃したセット

本では、大惨事の原因についてはとても曖昧なままである(目のくらむような光とそれに続く火の玉の記憶についてのわずかな記述)のと同様に、この映画制作者は、定石通りのオープニングのやり方、核戦争、工場災害、自然の大災害、あるいはこれらが一度におこるといった、あらゆる説明を省略することに決めた。

その結果はこの惑星が死につつあるということ。そこにはもはやエネルギーの蓄えはなく、木はなく、ほとんど動物もいない。生き残った人々は、すでに略奪されていないあらゆるものから栄養を取る。

この映画にとって、セットが重要なファクターであることは明白である。ジョン・ヒルコートは、できるかぎり実際の田舎を使うことにこだわった。セットデザイン責任者であるクリス・ケネディーと共に、ペンシルベニア州、オハイオ州、ルイジアナ州、ワシントン州とオレゴン州を、荒廃した平原、枯れた木々、打ち捨てられた高速道路、廃墟となった家々を見つける必要性から飛び回った。「すべての生活の痕跡を取り除いたんだ。」と映画制作者は説明した。「少しのプラスチックを除いて、ほとんどモノクロの世界にした。」「だが、灰と残骸で汚染された世界。ある叙情的な性質も持っているとはいえ、できる限りありのままで本能的にしようとしたんだ。」と彼は付け加えた。

撮影している場所はピッツバーグ近郊に位置している。産業の空洞化に見舞われつつあって、1980年代に全体的に住民たちに見捨てられた場所となり、建物の3分の2は空き屋になっている。そこで、中心となる、男が彼の昔の家を見つけるというシーンが撮影されていた。この朝のスケジュールでは、少年(コディ・スミット・マクフィー)が彼と同じぐらいの年の子供を見たと信じて、父親が彼をつかまえて彼が夢を見ているのだと告げるまで、追いかけようとするシーンだった。

風景はそのまま利用された。制作チームはそれに適切な人工の灰の層を加え、新しいテイクのたびにダンプカーで補給していた。3月の撮影開始から、寒さ、雨と雪はこの映画の助けになっていた。だが、この(50日の内の)第28日目では、春の天気が困難の増大を予告していた。にもかかわらず、俳優たちは寒そうに見えなければならなかったし(ポストプロダクションで、口から出る息が白くなるように霧を付け加える必要があるだろう。)、何層にも重ねた服を着るのがどんどん心地よくなくなってきていた。

視覚が重要なのとまったく同じように、聴覚も重要だった。列車の音や警察のサイレンとまったく同じように、鳥たちのさえずりは、生命の気配のない荒地にふさわしくない。ショーン・ペンの映画「イントゥ・ザ・ワイルド」で同様な困難に直面した音響技術者は、単一指向性マイクロホンで我慢しなければならなかった。雰囲気を付け加えるために、ヒルコートは後で風と、彼の表現によると「傷つけられた地球の振動」を加えるだろう。

音楽については最低限になるだろう。「おそらく背景音楽はなしだろう。」と監督は述べた。音楽の部分はほとんどまれで、コントラストをつけるために使われるだろう。ニック・ケイヴと(「プロポジション」の音楽を担当した)ウォーレン・エリスがすでに取り掛かっている。

撮影監督のハビエル・アギーレサロベ(アレハンドロ・アメナバールの「アザーズ」「海を飛ぶ夢」)は、少年が建物の窓の中に、別の子供をチラッと見るところを試していた。だが、太陽に照らされた道のコーディの影が、それを台無しにしていた。そのシーンは、太陽がまだ届いていないところへと10メートル移動した。ヒルコートにはたった2テイクをとる時間しかなく、もっと広範囲について用意するのにもっと十分な時間がないことを残念がった。

 

天から与えられたわずかの時間を生きる主人公

一人の浮浪者がチームの方に通りを歩いてきた。ここ半年間、着たきりだったように見えるぼろを纏って、この地区にほとんどいない残留している住人のようにはまったく見えない。撮影の開始の用意ができたヴィゴ・モーテンセンだ。彼の服は撮影衣装だが、むさ苦しい髭と髪は彼自身のものだ。そして彼のやつれ具合。この役を引き受ける前に、彼はノンストップの真剣な仕事でぎっちり詰まった2年間に耐え、休息をとると断言していた。彼は自分の写真展のシリーズをすでに準備していたが、ヒルコートが彼に "The Road" の脚本を読ませるやいなや、この役を断ることはできないと悟った。前向きな兆候に着目すると、「肉体的にも精神的にも極度に疲労した私の状態は、この役にとてもぴったりだった。」その他に彼がしなければならないただ一つのことは、髭をのばすことだった。
ヴィゴは、ある種の音楽を聴き、ショーペンハウアーのように、深い同情を主題に作品を書いたある種の詩人と作家のものを読んだ。それに付け加えて、落ちぶれ果てた人々と話をするために出かけていった。彼らはみんな違っていた。「ある人は寡黙で、ある人は攻撃的で、ある人は困惑していた。」だが、彼らは共通してある精神状態にあった。「そこで重要なのは、前に押し進め続けることだった。」

ヴィゴはこの本を気に入っているが、この映画はその視覚的な面によって、さらにもっとできるのではないかと思っている。「映画が本よりも良いとは言わないが、より骨に近く、より残忍になるのではないか。そこにあるのは、登場人物たちの状況と彼らの感情に他ならない。撮影された映像は素晴らしいが、見て感じの良いといったものではない。」

この役を引き受けた理由の一つが、深い同情の観念だった。「人々はもっとも困難な状況であっても、深く同情する能力がある。だが、ものすごくストレスを加えられると、その間、深い同情を忘れてしまうこともできる。そして今のところ、この本の登場人物たちよりもストレスを加えられるということは不可能だろう。彼らは飢餓と絶望で死につつあるのだから。」

彼の役は守らなければならない子供がいて、常に彼らが出会う人々すべてを疑い、警戒している。だが、カメラが撮影を停めれば、ヴィゴは国境近くの世捨て人のようではない。惜しげもなく、見境なく、絶え間なく、彼は与える。彼にとって良いものは、みんなにも良いものだ。ということで、チーム全員が彼のチョコレートへの渇望の恩恵を受けて、毎日、完全に袋いっぱいのチョコレート・バーを味わうことを強く勧められた。彼の大好物はある特別な種類、ベーコンとミルクチョコレートのミックスだ。

彼はまた、彼自身の写真や詩の本、CD(彼がピアノを弾いている)や、東ヨーロッパを旅した時に集めた本を配る。

午後近く、天気予報が約束したように太陽が隠れた。ヒルコートは、父親が、亡霊のような子供を息子が追いかけることを妨げて争う、素晴らしいシーンの一つを撮影することができた。各撮り直しの間、二人の俳優は、変わることなく同じ強い感情を示し続けた。残りの午後の間中、あらゆるテイクは同じ緊張感で、このシーンはいろいろな角度から撮影されたことだろう。

 

神童

コディは驚異的だ。彼は11歳で小説の少年より3歳年上である。何回ものオーディションが、アメリカ、イギリス、オーストラリアでおこなわれた。8歳というのは明らかに若すぎる。8歳の中から選んだら、ヒルコートはある種の感情の複雑さの表現を失敗する危険があっただろう。マッカーシーの同意のもと、監督は捜索範囲を拡げ、ついにコディを見つけた。この若いオーストラリア人とヴィゴの間の相互作用は驚くべきことだ。彼の年長者は、コディの仕事を一貫して的確で独創的に素晴らしくしている、直感と知性の混合を表現する言葉を見つけることができない。同じように夢中で、ヒルコートは彼が今まで仕事をした中で最も優れた俳優の一人だと認めた。この映画は十分に彼の恩恵を受けている。

待っている間、良い天気との闘いは続いていた。その日の終わりに、チームは撮影後半のスケジュールを受け取った。
どうやら、St.Helens山でのシーンは無くなったようだ。枯れた木々にとって残念だ。

メイクアップ・トレイラーの後でヴィゴが手を振っていた。暗い眼窩で、彼の青い目がかつてない大きな情熱に輝いていた。

Gerard Delorme

この記事でも、ヴィゴが毎日チョコレートを、半ば強制的に(?)配っていたことが書かれていますね。smile
どうやら例のベーコンチョコが大のお気に入りの様子。

コディ君とヴィゴのコラボレーションが素晴らしいようですが、ヴィゴが食われてしまわないといいですね。主演男優賞を二人で競ったり、なんてことはないのかな?

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コメント

記事の訳、ありがとうございました。
よく「子供と動物には勝てない」なんていいますものね。
子役は助演の方が受賞しやすいので、たとえどんなに目立っていてもコディ君が
賞にノミネートされるとしたら助演のカテゴリーだと思いますwink
来年の映画賞にコディ君と主演&助演で揃ってノミネート、なんてことになれば
うれしいですね。

ベーコンチョコって最初は想像できませんでしたが、塩キャラメルなんかもあるし
けっこうおいしいのかな??
ベーコンチョコを食べてもやつれていられるような体質になりたいです。 

投稿: Aralis | 2008.05.16 00:09

記事の全訳をありがとうございます。
あのシーンの撮影だったんですね。
<この若いオーストラリア人とヴィゴの間の相互作用は驚くべきことだ>
という部分もあわせて、ちょっと胸が熱くなっちゃいました。
一日でも早く日本で公開されますように!(かなり気が早い?・笑)

投稿: Eriko | 2008.05.16 12:04

大量の訳、ありがとうございました。
>「肉体的にも精神的にも極度に疲労した私の状態は、この役にとてもぴったりだった。」
のくだりに、俳優仕事のつらさがしのばれました。
ストレス解消にサンロレンソの旗でもなんでも振ってください(笑)
でも、
>暗い眼窩で、彼の青い目がかつてない大きな情熱に輝いていた
これ、いいですね。ヴィゴの目にはいつもやられます。

投稿: アンバー | 2008.05.16 22:28

Aralisさん
>「子供と動物には勝てない」
確かによく言いますね。
ヴィゴはすでに動物horseとは共演して、負けずにすばらしいコラボレーションを見せていますから、こんどの子供との共演も期待しましょう。
>来年の映画賞にコディ君と主演&助演で揃ってノミネート
いいですねぇ、ぜひそう願いたいところです。

Erikoさん
ご紹介、ありがとうございました。
共演者も豪華ですし、コーマック・マッカーシーの名前も「ノーカントリー」のアカデミー賞受賞効果でそれなりに有名になってきているので、日本公開も期待できますよね?

アンバーさん
>暗い眼窩で、彼の青い目がかつてない大きな情熱に輝いていた
ね、ね、これいいですよね。
ヴィゴの魅力を端的にあらわしていますよね。
撮影も、本当にあとちょっとのようです。
ヴィゴ、がんばれ!

投稿: punkt | 2008.05.17 14:48

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