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アラトリステ原作本より(その2)

前回に引続き、スペインのアラトリステのファンサイト Capitan-Alatriste の英語のフォーラムで、doctor-Qさんが英語に訳してくださった、原作1巻目の冒頭部分からご紹介します。(日本語訳では、一部省略したところがあります。)

物語の語り手はイニーゴで、ここでは彼がアラトリステと共に暮らすようになったいきさつが語られます。

ディエゴ・アラトリステと父とは本当の親友で、ほとんど兄弟のようだと言われていた。そして、それは本当だったのだろう。なぜなら、父がユーリッヒの戦いで、火縄銃で撃たれて死んだ時に - このために、ディエゴ・ベラスケスが彼の「ブレダの開城」の中に友人のアラトリステを描いたように(彼は馬の後ろに描かれている)父を描かなかったわけだが - 彼は、私が青年になるまで世話をすることを誓ったのだから。
これが、私が13歳になると、母が私にシャツを着せ、ズボンをはかせ、ロザリオと一かけらのパンを私の袋に詰めると、母のいとこがマドリッドに旅するのに乗じて、私をキャプテンと共に生活するために送り出した理由というわけだ。
こうして、私は父の友人に仕える、騎士見習いと召使いの中間のような生活をはじめたのだ。

ここに出てくる、ベラスケスの「ブレダの開城(The Surrender of Breda)」の絵は、現在マドリッドのプラド美術館にあります。
こちらのページの下の方に The Surrender of Breda が出ていますので、絵をクリックすると大きな画像をご覧いただけます。私もプラド美術館で見たことがありますが、かなり大きな迫力ある絵です。
この絵は、1625年にスペイン軍がオランダの要塞ブレダで勝利したことを記念して、10年後の1635年に描かれたものですが、アラトリステのお話では、ブレダ攻防戦は3巻目の「ブレダの太陽」が該当します。
絵の左側は降伏するオランダ軍で、右側が勝利したスペイン軍。アラトリステはもちろん架空の人物なのですが、この有名なベラスケスの絵の中に描かれていると言われると、原作者はどの人物をアラトリステだと想定したのだろうと、思わず調べてみたくなりますよね。役作りの参考にするためにプラド美術館でベラスケスの絵を見たと言っているヴィゴも、この絵はじっくりと見たはずです。

閑話休題、イニーゴの話の続きです。

もしも私を産んだ母が彼のことを良く知っていたのなら、彼への奉公を心配しないために、私を彼の元には送らなかったのではないかと思っている。しかし、本物ではないにしても、キャプテンという肩書きがその身分に高貴な見かけを与えたのだろう。それに私の気の毒な母は本当に健康ではなく、他に2人も食べさせなければならない娘達がいたのだ。そういうわけで、母は養わなければならない口を1つ減らし、私には宮廷に入る幸運を求めるチャンスを与えたというわけだ。彼女はそれ以上調べもせずに、彼女のいとことともに、村の司祭が書いた、彼に彼の義務と彼女の死んだ夫との友情を思い出させる長い手紙を持たせて私を送り出した。

私は彼に仕え始めた頃のことを覚えている。それは、フルリュースで受けた脇腹の傷の状態が酷いので、彼がフランダースから戻ってきた時からあまり経っていない頃だった。その傷はまだ新しくて、本当に痛そうだった。そして、私はちょうど到着したばかりで、ネズミのようにおびえてひどく怖かったのだが、夜、私のマットレスから、彼が部屋の中を行ったり来たりする音を一睡もできずに聞いていた。ある時は、痛みで中断されながら彼が低い声で歌うのを、また、ロペ・デ・ヴェガの詩や、呪いの文句、論評を声に出してひとり言を言うのを、辞めたいという思いと、この状況を面白がる思いの間の気持ちで聞いていた。
あれはまったく、悪意ある古い友人のある種の避けられない冗談が彼に時々引き起こす、不運と困難に直面した時のキャプテンにはよくあることだった。たぶん、それは彼の風変わりなユーモアのセンス:粗野で、不変で、自暴自棄な - のせいなのだろう。

後ほど紹介するところに出てくるのですが、アラトリステは過去の戦いの名残の古傷が体中にいくつもあります。悪意ある古い友人というのは、この時々疼く古傷のことを指しているのでしょう。
夜中に歩き回りながら、ぶつぶつひとり言を言う、何やらおっかないおじさんに預けられたイニーゴ少年はさぞかし困惑したことでしょう。


今回の記事の参考にさせていただいた、doctor-Qさんの英訳は、こちらでご覧いただけます。やはり同じものが Viggo-Works の Forum にも転載されています。

 ⇒ アラトリステ原作本より(その3)

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コメント

実を言うと「アラトリステ」には余り興味が無かったのですが、とても面白そうな話ですね。
コスチュームとヒーローを楽しむだけの、単純な時代劇かと思っていました。
それがまさかこんなに面白そうな話だったとは!

物凄く興味を持ちました。何とか日本語で原作を読みたいです。(邦訳が出ることを心から願っています。)

こんな良い紹介文をアップしてくださって、ありがとうございました!

投稿: nameko | 2005.03.16 15:56

namekoさん
やはり、スペインでベストセラーになっただけのことはありますよね。
最初から読者をぐっとひきつけてしまう感じで、すごく面白そうなんです。
こんな稚拙な訳、しかも英語経由の二重訳で興味を持っていただけたとはとても光栄です。
本当に、日本語版を出して欲しいものです。

投稿: punkt | 2005.03.16 17:49

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